第18章 第21層~第30層 その5 "Hero"
要はリアナの言っていた通り、客―先程外で見たお爺さん達だろう
経緯を聞き、納得すると同時に疑問が生まれた
「このゲームに違う世代の人がいるなんて、何か珍しいよね」
「ね、不思議だよねぇ」
クリスも同意した通り、彼等の見た目は紛う事なき老人だ
そしてこのゲームは、開始時に全てのプレイヤーの見た目が現実の姿と同じになった
その後、アクセサリーや髪色といった若干のもの以外、見た目に関する変更は不可能となっている
つまり、あのお爺さん達は現実に老人であるのだ
少なくとも私達若者からすれば、自分達より二回り近く上の世代が現代っ子の如くゲームに興じるとは思えない
だからどうして、この世界にいるのだろう―と疑問が浮かんでしまうのだ
「まぁその辺の理由なんて何でも良いけど。迷惑かけなきゃね」
先の事があるのかリアナはかなり淡白な反応であった
まぁそれも致し方ない事だろう
「でもリアナ、あの人達以外に凄い人達かもよ?」
「クリス…アンタねぇ―」
「―それ、分かるよ」
クリスのちょっとした疑問を返そうとしたリアナの言を遮ったのはエリーだった
今までちびちび飲んでいた砂糖たっぷりのコーヒーから口を離し、クリスとリアナを見ていた
「本当に凄い人って、一見そうじゃないしその瞬間まで凄さが分からない。それで人間としてのバランスが取れてる」
それだけエリーは言って、再びコーヒーに口をつけた
本当にこれだけであった故、クリスとリアナは呆気に取られていた
「まぁ少なくとも、元気なお爺さんって事で良いんじゃない?」
「元気過ぎて他人に迷惑かけるのはゴメンだけどね」
それから店を出るまで、私達は他愛もない話に興じていた