第17章 第21層~第30層 その4 "Combination?"
ボスと人―今はそのどちらも脅威だ
しかもこちらは三人―最悪の場合、二人や一人でやることも考えなくてはならない
しかし、私の「全力」は人に向けて良いものではない
手加減とかそういう意味ではなく、純粋な危険性として
故に、まだ開けない―意識した瞬間に跳ね上がる衝動を我慢しろと押さえつける
まず目指すはケンタの位置、周りを撹乱しつつ彼を救出する事だ
正面―相変わらず騒乱の中に彼はいる
脚力にブーストをかけて走り、走り―彼と背中合わせになるように停止した
「ちょっと…ごめんね!!」
ブーストを更に継続させ、地面に向かって踵落としを放つ
勿論誰かがいる訳ではない
狙いは巻き上がる地面、瓦礫、土、砂―如何に認識が変わろうと基本は人間だ
だからこういうのが巻き上がれば僅かに隙が生まれる
(今だ―)
周りが隙を見せた瞬間―一気に頭の中、"引き出し"を開く
一気に感覚が鋭敏になり、周りが遅いとさえ見えてくる
まだ周りは怯んでいる―この間に私は後ろにいるケンタの手首を掴み、最も広いスペースがある場所へ投げた
同時に私は駆け出し、その場を抜ける
幸いそこは騒乱からは離れており、一応安全と言える場所であった
「大丈夫?」
「ちょっと酔った……ってか、やるならやるって言ってくれよ…」
それだけ言えるなら大丈夫だろう―ならば次はボスだ
あのトンファー男がどちらに向かったかは分からない
だが、鋭敏になった感覚は確かな殺気を教えていた
左上―上空から来ている細い体躯
手にしているのは剣―だが今なら見切れる
最小限の動作というサイドステップだけで敵の剣筋から外れる
目標に当たらなかった剣は地を穿つが、気にする程じゃない
「脇貰ったりぃ!!」
この僅かな間にケンタは敵の横に移動していた
完全に取ったと言える瞬間―だが、敵は姿を消す事で回避した
だが、姿を消す奴の移動先など最早テンプレに等しい
私は敵が消えた瞬間に後ろに振り向き、今はまだ何もない空間に剣を振るう
予想通り現れた"皇帝"のボス
互いに攻撃動作に入っていた剣がぶつかり、鈍い音を辺りに響かせた