第3章 第1層~第10層 その2 "Game Start"
またも人が舞う
だが、その中にカミナの姿は見えなかった
(どうなったの…?)
土煙が晴れる
徐々に明らかになるボスの赤い姿
そのボスが両手持ちで扱う、巨大な太刀
そして―太刀の下敷きになっている、カミナ
肉体に太刀がめり込んでいる
そしてここからでも分かる―カミナのHPバーが急速に減っていき―
「…ぉ…ぐ…」
―HPがゼロになった時、言葉無くカミナが砕け散った
その様は、今まで倒した敵と同じように青い結晶が砕けたようなエフェクトで…敵もプレイヤーも同じだと言うようなエフェクトだった
つまり、今この瞬間に、カミナという人物が死んだのだ
その場にいた全ての人に衝撃と動揺が走る
直前まで全員を指揮し、士気を高めた人物が呆気なく死んだ
この時、当然ながら私達は衝撃と動揺ですぐには動けない
しかし、向こうにはそんな事は関係ない
もう一度、ボスが大きな跳躍
出ている腹からは想像出来ない跳躍だ
そして着地先は…私達の遥かに後ろ―他の隊が待機している位置に地響きを伴って降りていた
そして、直後に太刀の武器スキル
それを確認出来た時には私は衝撃波により、吹き飛ばされていた
柱か壁かは分からない、がとにかく背中を強打
一瞬飛ぶ意識が戻った時には全部隊が散り散りに飛ばされたりと、蹂躙されていた
そして無差別に進む蹂躙は方向性を持つ
邪魔な人込みを荒々しく払いながらボスは進む―よりにもよって私の方角へ
さっきの強打が効いているのか、すぐに身体が反応しない
息も絶え絶えだ
だが、ボスが来るのは分かる
緊張と動揺ではない―恐怖が私を支配する
太刀が振り上げられる、このままでは私に直撃だ
でも、身体が動かない
死にたくないのに…あの太刀が恐ろしい
「リリィ!!」
誰かが叫ぶのが聞こえる
だが、私は目も顔も動かせなかった
だから誰が叫んだのかも分からぬまま、太刀が振り下ろされるのと同時に、顔を背けてしまった