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SAOGs

第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"


膠着状態は続いていた
ユリは度々ミヤの首を少しの間だけ解放するが、すぐに押さえつける
額は短剣の先によって少しずつ掘られているようで、出血のエフェクトはその量を増していた

「ねぇ、ユリって呼ばれてたよね?」

このままでは駄目だ
向こうは今を変えるつもりは無いらしい
こちらは下手に動けず、武器も僅かに距離のある位置に放置されている
ならばこちらが揺さぶるしかない

「そうだけど?」

乗った―
舌戦は苦手だが、今はそれしかない

「さっき私の事、見てたよね?」

彼女については何も知らない
そして"何故殺しなんて真似を"等という話題を振っても無意味だ
いつかの男―ウェンドロと同じ理屈だとしたら話題そのものが終わる
だから、今持っている糸口はこれしかなかった

「私は確かに普通じゃない。しかも、現実じゃ不便しかない。でも…物珍しいのも、事実だし」

少し自嘲的だろうか
だが、これくらい言わないと向こうは乗らないかもしれない
そう考えた上での発言だった

「別に…ただ殺しそこなった人がいたから驚いただけ」

だが、ユリの発言は逆に私を驚かせた
殺しそこねた…私を…?

(まさか―)

しかしすぐに合致はいった
つい最近そんな事があったじゃないか―第二十五層ボス戦の謎の押し出し
あの時私はエリーのお陰で事なきを得たが、私の他に二人のプレイヤーが死んでいる

「アレを貴女がやったの…?」

「そうだよ。まぁ、思い付いたのはジュリだけど」

当たり前の事を語るような口調だった

「でも…アンタだけ仕損じた」

それが途端に変容した
瞳と口調が一気に暗さを増した

「あの時失敗したのに会えるなんて普通は考えられない。でも会えた。だから今度こそ…今度こそ殺してやろうと思ったのに…この子が割り込んだ。ジュリが滅茶苦茶やるから……だからこの子も、アンタも殺さないと…殺さないと殺さないと殺さないと…」

暗さは徐々に狂気を孕み始めていった
藪蛇―乗せる所か危ない橋であったと私は漸く気付いた
だが始まった狂気は止まらない
小さく繰り返し呟いたユリは途端に爆発した

「殺さないと…いけないんだ!!」

同時に右手の短剣を振り上げた
ミヤは動けない―私は直前にあった警告も無視して、一気に駆け出した
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