第16章 第21層～第30層 その3 "Alien"

何なんだ
どうしてこうなった―

そんな疑問が渦巻きながら､私は身体を起こす
幸いにも潰れている部分はない
こういう場合まず考えるべきは合流だ
そう考え歩き出そうと―

｢動かないで｣

―直後､聞き慣れぬ声に足を止める
晴れる土煙､その先にあった光景に､私は驚きを禁じ得なかった

先程､僅かな間だが共闘した筈の二人
その内の一人―二本の短剣を使うプレイヤー､ユリがミヤを押さえていた
しかしそれは､ただの押さえ方ではない
仰向けになったミヤの胴に乗り､左腕でミヤの首を押さえつけている
右手には短剣―それをミヤの額に突き付けている
しかも､もう一本の短剣はミヤの右手―掌を貫くように地面に刺さっていた

一見すればユリがミヤに覆い被さっているだけにも見えなくはないが､危険なのは明らかであった

｢ミヤ―｣

｢動かないでって言ったでしょ!｣

明らかになった状況
思わず駆け寄ってしまいそうになったが､ユリはそれを制止した

｢動けば…この人を殺す｣

出された言葉を私は間違いなく認識出来た
所謂これはアレだ―人質を取られている
ここまで来て漸く分かった―先に出会った二人は殺人者だ

｢武器を､鞘ごと捨てて｣

従わなければ殺す
本気の目だ―今は､そうしなくてはならない
手元にあった剣を鞘へ戻した上で､腰から外した
今は仕方がない―横へ放つように投げる

次は何だ―いや､そうではない
大事な事はユリとミヤから視線を外さない事
隙を見付けて､一気に二人の位置まで移動しなければ…

だが､悠長に構えてはいられない
まずユリの左腕はミヤの首―つまりミヤは窒息と戦っている
次に右手へのダメージ―刺さっている短剣を抜かない限りダメージは継続する
三つ目として右手の短剣―軽く額を掻いたのかミヤの顔面に血のようなエフェクトが流れている
悠長に構えていれば､これら三つの内どれかないしは全てがミヤを殺すだろう

動けない状況―私の中では焦りだけが募っていった