第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"
寒い―ユリは洞窟内に入った今でもそう感じていた
しかし、現状の相方―ジュリは全く寒さを気にしていないようだった
変温動物か何かだろう―ユリは嫌味を言うように感じていた
もしかしたら実際にそうかもしれない
何故なら彼女は人殺しの人でなしなのだから
だとしたら自分もそういう類いの筈だ
(私も殺したのは、変わらないんだから…)
自分もジュリも、同じ穴のムジナ
どちらも非情な殺人者なのだ
今、自分の胸の内に後悔だとか、懺悔の気持ちがあっても拭えない
後戻り出来ない場所に、ユリ自身が足を踏み入れてしまったのだ
「で、ここが新しい拠点?」
だから、続けるしかない
此度の狩りを
「そうだねぇ。まぁ、こんな寒い所にずっといるってのも嫌だろうから、軽く温めてすぐに違う場所に移るさ」
温める―こんな寒い場所をどうやって温めるのだろう
そんなユリの無言の疑問に答えるように、ジュリは小さな筒を取り出した
「火薬だよ」
ユリが何か問う前にジュリは答える
「本来薬とか作る調合スキルのちょっとした応用さ。割りと簡単なクセに威力は充分。さぞ楽しませてくれるだろうねぇ」
「で、どうするの?」
作れた理屈は分かった
ではそれをどうするのか
その疑問にジュリは口元を歪めた
「最高のタイミングで、ドン!!後は好きに殺りゃ良いさ」
簡単だろう、と言いたげなジュリの口調
ユリはその返答を、敢えてしなかった