第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"
二十六層―
タウ・ヴォランティスという名の街を中心に据えたこの層は、今までと異なっていた
それはこの層が"冬"であるという事だ
雪が常にちらつき、屋外の全てと言えそうなレベルで雪が積もっている
街もフィールドも相応に寒く、所謂上着の類いが飛ぶように売れたのである
普段から着けている外套も余り意味が無く、全員で厚いフード付きの上着を新たに揃える必要があった
そういう準備をした上であっても、身を切り裂くような寒さが私達を襲う
しかし、目的はこの寒さの先にある故、我慢して進まなくてはならなかった
今回、私達はフィールドのとある洞窟内で採集をするクエストをする予定だ
氷だとか、結晶だとかを一定数回収する―決して難しくない筈だ
しかしまだ辿り着かないのだろうか―それが問題である
幸い、吹雪だとかそういう具合にはなっていないのだがやはり寒い
ステータス云々関係無しに、私達の元来はただの若い一般人でしかないのだ
寒いのにはそれ相応に我慢が必要なのだ
故に―
「………」
―何と調子の良い事か
視線を下に向けてそう感じる
私の左脇―背中と胴に手を回すようにしてエリーがくっついている
お陰でこちらは歩きにくさを感じている
というより歩きにくい
しかしエリー本人はどこ吹く風
全く気にしていない
確かに温度としては充分かもしれない
だが、どうしても歩行が遅れ気味になる
この辺りもまた、私は我慢しなくてはならなかった