第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"
何処かの層―何処かの森―
月明かりだけが僅かに道を照らしている
この状況で森のようなエリアを歩くのは極めて危険な行為だ
普通のプレイヤーはそのような真似をしない
だが、彼女―ユリは既に普通ではない
数名のプレイヤーを手にかけた殺人者である
だから彼女には普通に戻れる場所はない―そういうペナルティだ
しかも一日二日で無くなりはしない
故に彼女は森の中を歩く
今現在唯一存在する彼女の帰れる場所へ
早足で進むこと数分
森の中に月明かり以外の光が見える―炎だ
漸く辿り着いた―ユリはその事実に安堵する
「さてユリ、成果はどうだったかい?」
「ジュリ…」
だがユリの束の間の安堵はもう一人の女―ジュリによって壊された
「…二人は出来た。あと一人やってみたけど…失敗した」
一応報告はする
だが、ユリの気分は一気に落ちる
この女こそがユリにとっての全ての原因で、今現在唯一の仲間なのだ
「まぁ確かに、ボス戦の最中に殺れってのも元々無茶な話だから、そんなに多くなくていいさ。今はお前が帰って来てるってのが大事さね」
詭弁だ―ユリはすぐに思う
だが、それ以上は思えなかった
彼女自身も、同じ穴のムジナなのだから
「それで、失敗した三人目ってのはどんな奴だったのさ?」
三人目―先程唯一殺しに失敗したプレイヤーだ
ユリもかなり必死になっていた為、細かい特徴は覚えていない
ただ一つ覚えていた事は―
「凄く…白かった」
―そういう女だという事だけだ