第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"
痛みに喘ぐボスは無茶苦茶に身体を揺らす
かなりの力、幾つものベクトルによって私の身体が浮き、空中へ投げ出される
だがこれも問題ではない
空中で身体を捻って着地の体勢を作る
仮に着地の時、既にボスが突っ込んで来てももう一度跳躍して回避出来る
そんな事を考えながらの着地―ボスは予想通り、私目掛けて突進してきていた
(なら―)
一瞬の思考
もう一度足に力を込めたが、予想だにしないものが割り込んだ
背中に軽い衝撃
トン―という表現がまさに似合う力加減
ただそれだけでも、私のベクトルを変えるには充分だった
何も準備が出来ぬまま、私はボスの前に押し出される
このままでは成す術も無く、ボスに撥ね飛ばされて死ぬだろう
先程の二人もこんな風に死んだのだ―等と納得している暇はない
崩れた体勢のまま、無理矢理地面を蹴って跳躍しようとする
直後、左手に何かが巻き付いた
それは無理矢理私を空中に投げ出していく
視線を僅かにズラすとチャクラムが巻き付いていた
という事は、エリーが救ってくれた事になる
感謝はしたいが、今はその暇はない
地上にいる面子も突っ込んできたボスを回避していた
空中にいながら、周囲に視線を巡らす
さっきのが明確に人なら、この部屋の中にいる
だが、そもそも私がその姿を見ていない
誰かなんて分からないまま地上に辿り着く
チャクラムが外れ、ボスへ一気に駆け出す
今ならボスの背中、刺さったままの剣を取りに行ける
実際、そう距離は無い―それ程時間をかけず剣を握る事が出来た
そのまま、切り上げるように剣を抜くと、ボスは大きく喘ぎながら、また暴れ出した