第16章 第21層~第30層 その3 "Alien"
二十五層―
タイタンという名の街を中心としたこの層で、私達は割りと久方ぶりのボス戦に足を運んでいた
まるで近未来SF―宇宙船のブリッジという場所が今回のステージであった
だが、未だボスは現れていない
私達を含めた多くのプレイヤーが、この場に放置されて数分経っていた
いい加減緊張が保たなくなるという時、突如それは始まった
天井近くや壁に配置されたスピーカーがノイズを発生させたのである
テレビで言うなら砂嵐と呼ばれるそれに該当するそれは、徐々に収まり旋律へと姿を変えていった
ギター―なのだろうか、静かではないが何かのイントロのように音楽が流れている
だが、大半のプレイヤーはそれを気にしなかった
何故ならここはボス戦の場所だからだ
大切な事は何処からどのようにボスが現れるかだ
「これどっかで聞いたな…何だったっけっかな…」
「ケン、少し集中したらどうだい?」
しいて言うならば、ケンタがやたらこの音楽に食い付いたというくらいだ
別段気にする必要はない―まだボスの気配に集中出来ている
「…あ、思い出した!」
ややあって、ケンタはもう一度呟く
だが、これは私達の耳に入らなかった
何故ならこの呟きと同時に、ステージであるブリッジ―その中でもかなり大きな壁が、突如けたたましい音共に歪んだのである
未だ音楽は止まないが私達の耳に入らない
視線は歪んだ壁に釘付けとなっている
壁は更に二度三度、何かがぶつかったかのように歪み、歪み、歪み―
「この曲アレだ!キルビルだ!!」
―そして、僅かな間を開けて四度目の衝突
印象的な三音が響くと同時に、壁が吹き飛ぶように破れ、その中からボスが現れた