第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
割り込みをかけた主はいとも容易く私と部長を飛び越えて、敵との間に物理的な割り込みをかける
同時に繰り出された敵の左手、その拳はこちらに届く前に真っ二つに裂かれていた
何が斬り裂いたのか、暗闇で分かり辛かったが慣れなのか理解までさほど時間はかからなかった
それは黒い塊―とも見える両手剣
そしてそれを片手で操るバンダナの人物―
「よう、とりあえずは生きてるようだな」
「ジンか。いやなに、ちょっと情けない状態なんだけどね」
ジン―テスターであり現在もソロで動いているであろうプレイヤー
私達とはちょっとした縁ではあるものの、知り合う事となった
私の中では部長以外のテスターにまともな人物がいたのか、と知った人物である
「キョウヤ!」
直後、またも後ろから声が響く
振り向くとシンジ先輩を始め、上にいた五人が走ってきた
「やぁ、皆無事だったみたいだな」
「まぁな。ついでに、お目当てのブツも手に入れた」
そう語るシンジ先輩
なるほど、クエストに必用な品は手に入れた
ならば―
「後はアイツだけか」
―言いながら部長は私を押すように支えから離れ、シンジ先輩がそれを受け止める事となった
「残念だけど俺はこんなだ。皆、協力してこの場を切り抜けよう」
下がる部長とシンジ先輩
呼応するかのようにエリー、ミヤ、ユウ、ケンタが前に出る
目の前には腕を斬り裂かれただけの人型ミミック
ここに、進行中クエストに決着を付ける戦いが、始まった