第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
敵と同時に走り出したのはジン
だが先に攻撃―拳を繰り出したのは敵だった
真っ直ぐに出された拳を、ジンは両手剣の腹で受け止める
「馬鹿力と聞いていたが…まぁ、この程度か」
そう言って彼は敵に蹴りを放つ
それは同時に敵が放った蹴りと真正面からぶつかり、互いに距離を取る形となった
「だらあぁぁぁぁ!!」
そこに割って入るようにケンタが上から重力任せに両手斧を振り下ろす
タイミングとしては完璧―だがここで敵は意外にも身体のしなやかさを見せ付けた
頭、というより箱の外装を僅かに剥ぎ取っただけにすぎなかった
だがこれだけで攻めは終わらない―既にミヤとユウが駆け出している
「はいはい!そのままで頼むよ!!」
先に走るミヤはそう言いながらケンタに向かっている
今のケンタは両手斧を振り下ろした体勢のままだが、恐らく何の話か分かっていない
故に―
「お前誰に―おぐばっ!」
―背中を踏み台に跳躍したミヤに思いっ切り体勢を崩される、もとい倒される事となった
跳躍したミヤは天井を蹴って、敵との距離を一気に詰める
敵は素早くこの状況に対応し、既に反撃の体勢を整えミヤへ拳を繰り出した
だがミヤは狙ったとばかりに、突き出された拳を跳び箱の如く回避―敵の頭上に回る事となった
「視界貰った!!」
敵の頭上のミヤはそのままブーストをかけた足を振り子のようにして蹴り込む
狙いは宝箱―その蓋の部分である
頭と箱が同一の位置になっている故、その蓋を閉められるともなれば、僅かであっても視界と反応を奪う事が出来る
狙い通り蓋を閉じられた敵は、僅かながら動きを鈍らせた
その隙を逃す者はそういない
ミヤより僅かに遅れてユウはケンタの元に着き、彼の手を引き立たせた
「ケン、恨まないで欲しいな」
ユウはたったそれだけ言って、ケンタを独楽の如く振り回し、敵に向かって彼を放ったのである