第14章 第21層～第30層 その1 "Trap"

それだけで敵が消える訳ではない
だから､こちらも鎌鼬を止めない
連続でブーストをかけ続け､鎌鼬を放ち続ける

止めどない敵の来襲に皆の心配をする自分が生まれる
だが今はそんな時ではない―下手をすれば我が身に危険が降り掛かる
精々動けて､ギリギリ視界に入るミヤか部長の所―今の陣形を崩さない為にも､それ程動ける訳じゃない

切り散らす敵の中に舌を出したタイプが増え出した
人型はまだ､多分誰の所にも来ていない―とするなら､人型が敵戦力の重要位置にあり､数が少ないという事は想像に難くない
今何もしていないなら､まだ状況は良い筈だ
飛び掛かって来るように伸びた舌を掴みながら､そう感じる
そのまま舌を振り回し､他の個体にぶつけて砕く

直後､正面からまた飛び掛かる蜘蛛型をブーストの入った踵落としで砕き､右にいた個体の蓋に差し込むように剣を刺し､左から来た個体を肘鉄で箱ごと破壊する

油断は無い､しかし余裕はある
まだ行ける筈だ―そう感じた時､敵の波が止んだ
終わり―いやそんな筈はない
その予測は当たった
満を持してというべきか､人型が動き出したのだ
人の数倍はあるであろう跳躍力で､私との距離を一気に詰めてきた

避ける道はない
故に真っ向から当たるのみ
ブーストをかけた剣と､敵の繰り出す拳がぶつかり､衝撃は床を割る
重い､しかし負けられない―その感覚に私の腕が応え､力を込めた時､金属の放つ不自然に甲高い音が鳴り―そして腕に込めた力が行き場を失う

(折れた―!!)

それを理解した瞬間―

｢―――｣

敵の拳が私の腹にめり込み､私の意識は呆気無く沈んでしまった