第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
宝箱が独りでに、しかも指向性を持って跳ねるなど考えられない
つまりこれもミミック―但し、最初の個体とは異なり腕と舌だけが表に現れている
「チッ!」
舌打ちをした部長は飛んできた個体を蹴って後ろへ跳躍
同時にエリーがチャクラムを引っ張り、更に加速させる
だがそれに追い付いた者がいた
残った一つの宝箱
そこから六つの足が生えていた
まるで蜘蛛―しかしそのスピードは蜘蛛にあらず
跳ねただけだというに驚異的な加速を見せた
「うおっ!!」
咄嗟の反応で部長は槍を突き出し、蜘蛛型のミミックを倒した
そのまま着地―私達もその周りで構える
敵の残りは人型、手と舌を出している奴―だけだと思った時、天井から箱が落ちてきた
一つ、二つ、三つ―数えるのが面倒なくらい私達の周りに箱が落ち、独りでに開き、足を舌を表に出した
「やれやれ、厄介だな…」
シンジ先輩のボヤきの通りである
三種のミミックが沢山―簡単に逃げられないこの状況は、まさにしてやられたというものだ
「皆、なるべくこの位置を死守。陣形を固めて対応だ。一人になるなよ、どんなになっても必ず二人以上でいるんだ」
しかし、状況に対して部長の声は冷静だった
各々頷きで型のその声に応え、円を作るように構える
「絶対に生き残るぞ。それじゃ…スタート!」
掛け声と同時に走り出したのは敵だった
ミミック団体様―まさにこの表現が似合う数が全方位から押し寄せる
私の目の前にも、蜘蛛型ミミックのバーゲンセールだ―だが、あっさり死ぬ訳にはいかない
腕力ブーストをかけ、高速の抜刀―巻き起こる鎌鼬が、第一波の一部を砕け散らせた