第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
祭壇にバランス良く配置された三つの宝箱
広い部屋に対してそれだけである
「……怪しいな」
「確かに」
「それっぽい臭いがプンプンするッスね」
シンジ先輩、部長、ケンタの三者が聞くまでもない怪しさを確認し合う
尤も、ケンタはそれっぽい事を言いたいだけのようにも見えたが…
ともかく、部屋の広さに対して物が少なすぎる
だが、罠の可能性とそうでない可能性が今はまだ半々だ
恐ろしさはある
だが確かめなければ分からない
故に宝箱に近付く
周囲を警戒しながら宝箱の至近距離に入る
近付いただけでは何もないようだ―一先ず安心
次の問題、実際に開けてみる事
どれから?誰が?―とも思ったが、そんな話をする前に部長が宝箱の前に進んだ
ゆっくりと部長の手が左の宝箱に触れる
鍵の類いは付いておらず、そのまま蓋を持ち上げれば、箱は開く
だから警戒して、ゆっくり開ければ良い―後は開け切る勇気だ
一呼吸置いて、部長が腕に力を入れる
少しずつ顕になる宝箱内部の闇―それが表へ、表へ、表へ出て、蓋が開き切った瞬間―何かが飛び出した
「っ!!」
一瞬で掴まれる部長の顔―飛び出したものは、腕
しかも長い
宝箱内部から出て来たのはそれだけではない
もう一本の腕、二本の足―いずれもどうやって入っていたか疑問に感じる長さだ
そんな疑問はともかく、罠だった
宝箱に化けたモンスター―ミミック、コレをまずはどうにかしなくては…
長い手足故、普通の人間よりも大きい
故に顔を掴まれた部長の位置はみるみる高くなり、跳躍で漸く辿り着ける位置になる
そのまま部長は空中で投げられた
長い腕からは大きな力がかかり、それだけ勢いを増す
それだけのスピードが部長にかかっていた
直後、素早く反応したエリーがチャクラムを射出する
投げられた部長のスピードと部長本人の重さ―重力を直感的に計算し、移動先を予測して放たれたチャクラムは上手い具合に部長の腕に巻き付く
敵に近かった私達は各々後ろへ跳躍し、敵から距離を取る
エリーのチャクラムによって部長は投げられた勢いを殺し、壁を蹴って跳ねる
同時にエリーが後ろへ跳躍しながらチャクラムを前へ振り下ろす
壁を蹴った部長は、先程とは全く逆のベクトルに動かされる
槍を構え、振り下ろして突き刺す形の部長―勢いの乗ったミミックへの一撃
それは、突如跳ねた宝箱によって阻止された