第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
実際、建物となると相応の値になるのは想像に難くない
七人全員の財布が空になる覚悟が必要だろう
しかし―
「まぁ、オレはやっても良いと思うんスけどね。家買うとか、現実じゃ余計出来ねぇし」
「私も―っていうか、固有のキッチンが欲しいでーす」
ケンタとミヤ―二人が賛成票を投じたことに部長が息を吹き替えした
流石に漢泣きとはならないものの、その顔は喜びと感動で満ち溢れている
これで賛否―というか、やろうという考えか、難しいしやらなくて良いという考えかに二分された事になる
「リリィ、どうする?」
という事は残りは私
エリーの一言に冷や汗のようなものが背中を伝うのを感じる
まさか、こういう選択―しかも私が最後とは考えていなかったからだ
正直な話、家を買いますと言われても実感が沸かない
想像の範囲内で収めたとしても、多額の金が必要なのは明確で、攻略という目的から考えると些かマイペースに過ぎるのではなかろうか
しかし、夢のある話だ
家―拠点を得ればある意味自由に行動出来る
他のプレイヤーを気にする事の無い生活が出来るのだ
また、日本人の特性なのかゲーム内とは言え、帰る場所に魅力を覚える
そこを考えると、心は大分買う方に傾きを見せる
しかし、攻略と金銭面という二つの問題も私にのし掛かる
「えっと…」
中々言葉にならない
大きな選択になれていないが故に、若干言葉が震える
「じゃあ…とりあえず、お金…集めます?」
何を言っているのだろうか
これじゃまるで既に買う事を決めたみたいじゃないか
そう直感した私は急かされたように口を回す
「ほら、アレですよ。仮に買えなかったとしても、貯めたお金を装備とか道具とかに使えば良い訳だし…だし……」
しかしそれもここで尽きた
弱くなる語気、結局何を言いたいのかハッキリしないが故に、何とも言えない感じになった空気
どう、収拾を付けようか―
この困った事態を破ったのは、シンジ先輩の溜め息であった