第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
それから一頻り無重力を体験し、私とエリーは街中を再び歩いていた
重力を確かに感じながら、宿に向かって歩く中、私達は部長とシンジ先輩を見つけた
向こうはまだこちらに気付いていない
その表情は、何か考えているような、落とし所を探そうとしているように見えた
何か考えているのか、しかし無視をする訳にもいかず、私達は何となく彼等に近付くと、流石に二人も気付いたようだった
「あぁ、二人共。今日は二人でショッピングでもしてたのかい?」
「そんな所です。ところでお二人は…そういえば何処へ―」
「まぁ、色々見てきたとだけ言っておく」
シンジ先輩の返した答えに私は「はぁ…」としか言えなかったが、脇にいたエリーが唐突に口を開いた
「男二人…色々見る…いかがわしい?」
「いやいや違うから」
出た言葉は爆弾であったが、部長の落ち着いた対応によって不発となった
その後私達四人は宿への帰途に着く事とした
歩きながら、部長とシンジ先輩の会話に聞き耳を立てる
聞こえる言葉は僅かだが、お金が…とか、妥協…とか、素直に説明して…とか気になる言葉であった
結局内容を探れないまま、私達は宿に着いた
別にこのままでは夜も眠れない―という訳ではないが、気になったものの答えがないままというのも些か複雑ではあった
しかし、答えは意外にもすぐに明らかになった
「皆、ちょっと聞いてくれ」
食事時、唐突に口を開いた部長に皆の視線が集まる
「俺達オリジナルセブン、結成してから大体十層くらい登った訳だ」
紡がれた言葉に、記憶が甦る
そう、私達が一つの団体として改めて始まったのは十一層
条件となっていた敵と、壁を一つ超えた時だ
「良い悪いは別にして、俺達もこの世界にかなり慣れた。ただ、全員の目標でもある"皆で生き残って元の世界に帰る"の達成には時間がかかる」
確かにその通りだ
実際にこのゲームが"始まって"どれくらい経つだろうか
ゲーム内の時間が現実の時間とリンクしているなら―ざっと考えて半年弱くらいだろうか
ともかく、そこから考えれば最終の百層など先の先にあるという事だ