第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
投げ出された私の身体
しかしそれは、床に衝突する事なく、空間を漂った
「ちょ―」
回る景色に僅かに混乱する
私の身体はそのままフワフワと空間を漂い、壁に当たってその勢いを消した
一体どうなっている?―いや、一つ答えが見える
ただ、私はそんな感覚を全く知らない
手掛かりを探るように壁を掴み、飛ばない程度の勢いで足を動かす―が、それもまた感覚が弱い
抵抗すら感じられない水の中
答えが確信に変わりつつある中、私はエリーへ口を開いた
「ねぇエリー、ここってもしかして―」
「ん、無重力体験コーナー」
やはりそうだったか―疑問に解答を与えられた安堵と共に視線を声の方に向けると、エリーが上下逆さまでこちらへ向かってきていた
「一応、リリィの方が逆」
さいですか
先程幾らか回転したから、上下が狂ったのだろう
尤も、いきなり無重力空間に出されれば誰であってもこうなるだろう
「まぁ、私も最初はビックリした」
とは言え、既に上下が狂う事なく移動できている辺りを見ていると、エリーの才を今一度思い出す
ともかく、エリーの言った面白そうな場所とはこれの事だったのだ
尤も、面白いよりも驚きと困惑が先行したのは否めないが
しかし…良く出来ている
壁にかけた手を使い、方向を修正しながら感じる
何故こんなものがここにあるのかと疑問に感じるが、同時にここはゲームなのだと思い出す
ゲームの中なのだから、制作時点で僅かにプログラムを変えていれば出来る技だ
「ま、何の為かは分かんないけど」
「確かに」
床、天井―あらゆる壁を足場に自在に動きながら口を開くエリーに苦笑しながら答える
「でも、絶対体験出来ないから、ある意味貴重かもね」
そう言いながら、私はエリーに近付こうと、壁を蹴って空間を漂った