第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
「私的にはこっち」
選んだもの
それは赤の方―ドレスのようでメルヘン雰囲気の漂うもの
戦闘ともなると些か違和感のある風体になりそうではあるが、それはそれで構わないだろう
「ん、サンクス」
短く返答したエリーはそのまま会計へと向かった
言葉少なく、表情も変わりはしていないが、その足取りが僅かに軽くなっているような気がした
寸刻の後、戻ってきたエリーは来るなり私の手を引いて店を出た
今度は何処へとも思ったが―
「お礼に、面白そうなとこ」
―聞く前にエリーが答えた
具体的に何処とは言っていない故、私はこの言には「さいですか」としか答えられず、エリーに引かれるがまま街中を進んだ
エリーに連れられた先には妙な施設があった
店、というには妙にサービス業というかエンターテイメントの雰囲気が漂う場所
まるでアトラクション施設のような場所だ
「まぁ、現実じゃ絶対体験出来ないかな」
エリーの言に私は首を傾げながら彼女の後に続く
中はきらびやかで華やか―そして商品に該当しそうなものはない
やはりアトラクションなのだ
では、何のアトラクションなのだろうかと私は疑問に感じた
エリーは現実じゃ絶対に体験出来ないと言っていたが、そもそもこの世界における大半の事象は私どころか人類レベルで初体験のものばかりだ
疑問の答えが出ないまま私とエリーはNPCに料金の支払いをし、内部に案内された
その先にある扉―扉の向こうの部屋には、特にこれといって変なものはない
しいて上げるなら半透明の幕を通らざるを得ない、という所だろうか
「先、入って良いよ」
明らかな入口
しかしそこにある半透明の幕の所でエリーは私が入る事を促した
中身を知っている、という事だろうか
だがこういった場合、私の立ち位置になった人物が入らなければ進まない
「じゃあ、お先に失礼」
私はこれだけ言って半透明の幕を突き抜けるように通り抜ける
そしてその次の一歩目で私の足は―
「あ――」
―すっぽぬけ、体勢を崩す
そしてそのまま、私の身体は部屋の中の空間に投げ出された