第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
如何にして合流するか―壁を延々蹴るか、それとも何処かに道があるか
だが、上に続いている道らしい道はない
どうやら地面だけが浮かんでいるようだ
いよいよどうするか、と考え始めた時―上方で轟音が鳴った
その音だけで大体想像は出来たが、やはり何かと思ってしまい、視線を上へ向ける
やはりというべきか、上の地面が破壊されたようであった
瓦礫と土煙に混じってにプレイヤーが落下してくるのが見える
(エリーは…)
まだ土煙の中か―と判断した時、土煙が真ん中から破裂するように膨らんだ
それまでも人や瓦礫が出る度、同じ現象が小さく続いていたのだが、これは違う
人や瓦礫よりも巨大であるが故に、移動だけでより大きい質量の空気を動かした証拠
物体の後ろに空気が移動したが故に、土煙―微細な粒が急激に移動する
ボスが上から降りてきたのだ
次いで、エリーが土煙から現れる
チャクラムを用いて、瓦礫を飛び回りつつ矢を撃ち込んでいる
だが、見た感じダメージを負っているようには見えなかった
やはり、今しがた手にした矢を使わなくてはならないようだ
「エリー!!」
思い切って、エリーに向かって叫びながら矢を投げる
私の声に気付いたエリーは、少しだけ視線を向けた
そのまま矢をキャッチ―
「使って!!」
続けざまに放った言葉が聞こえたか―愚問、届いている
エリーは迷い無く構えながら近くの瓦礫を蹴り、空中にいながらにして後ろに跳躍した
跳躍するエリーに向かって、ボスは先程地を割ったであろう砲撃を放とうと光を集める
対するエリーは跳躍の前から弓を構え、矢の狙いを付けている
これこそが決定的な差であった
まだまだボスが光を集めている間に、エリーは矢を放つ
それは先程私が見つけ、エリーへ渡った矢
必殺の威力を持ったそれは、ボスが光を放つ前に―ボスの胴体に吸い込まれていった
決まった―
そう思った時、ボスは今度こそ砕け散った
空間が元に戻り、瓦礫は消え、いつものものとなった迷宮区の意匠に戻った
空中にいたエリーは、何事もなかったかのように地上に降り立った
「サンクス」
短くそれだけを口にし、手を上げる
意図はすぐに分かった―私も軽く手を上げ、小気味良く合わせる
ここに二十一層はクリアされたのである