第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
何だアレは―と思わざるを得ない
その場に最初からあったのか、落ちてきた瓦礫のせいか、隠れるようにしてそれはあった
楕円形の黒い物体―両手で漸く安心して持てる大きさだ
しかし軽い―中身がないんじゃないかというくらいに軽い
これが何なのか私には分からない
見た目から想像するなら「黒い卵」とか、高級品であると考えても「黒い宝珠」という具合だろう
正直言って、この場にそぐわない
見渡す限り、という程でもないが辺りには地面か空間しかない
そこに何故、こんな物があるのだろうか
「………」
疑問に思うが、気にする程でもない
さっさと上に戻るべきだろう
そう思い、謎の物体を捨て置こうとした時―視界に光が入った
眩いという程でもない、鈍い光
何かと思って目を向けると、私の手の中にある謎の物体が、開いていた
それはまるで花が咲くような、立体が展開されていくような動きであった
そして開かれた中―そこには一本の矢があった
(まさか―)
確信はない
単なる直感だけで、私はその矢を掴んだ
『"Ωの矢"を取得しました』
現れたメッセージに私の直感は確信になる
つまりこれが、第二形態となったボスを倒せる武器という事だ
(だったら…何とかエリーと合流しなくちゃ…)
矢は弓によって放たれるもの
少なくとも私はそう思っている
投げる事も恐らく可能だが、最大の威力を発揮するのはやはり弓であろう
そして私の知る中で、弓を最も上手く扱えるのはエリー
故に彼女と合流しなくては…