第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
「真横ォ!?」
空中にいながら、思わず口走る
そのままエリーにキャッチされた為、事なきを得たものの―
(何なのアレは―?)
―腕から出ているのではなかったのか
もう一度ボスへ視線を向ける
間違いない
ボスは私達を正面に捉えている訳ではない
向きだけを考えると、むしろ全力でそっぽを向いている事になる
…腕から出ている筈の物がどうやって真横に向かうと言うのだ
原理も分からないインチキ染みた攻撃だが事実起きた
という事は次も有り得るのだ
この場合考えられる戦法―一つは浮かぶ
誰かが囮になって、それ以外がボスの攻撃範囲外から腕を落とす
問題がある―誰が狙われているか分からない
だから、撃つ瞬間になって漸く動けるのだ
ただ、誰かを囮にしているようで、自分が狙われていた…なんて事があれば笑えない
しかし、今の私にはその程度しか浮かばない
リスク過多、肉を切らせて骨を断つ、虎穴に入らずんば虎児を得ず―よく言ったものだ
「リリィ」
どうしたものかと思い始めた時、不意にエリーが口を開いた
「逆に狙われた方が楽かも」
「え?」
思わず聞き返してしまったが、エリーは既に行動に移していた
いきなり移動先を変える―その先は、ボス
「ちょっ…ちょっちょい!!」
急に正面切ってボスに駆け出すものだから、変な言葉が漏れ出す
だが、エリーは止まらない
身体を縮めるボス―その頭は私達を捉えている
「行くよ」
短く口を開いたエリーは、先程と同じ様に私を空へ放り投げた
ただでさえ自由の利かない空中
そこに浮く私―最早自らの状況をエリーに任せる他なかった