第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
ボスの目の前でエリーに投げられ、実質何も出来ない私
だが、直後に腕が何かに引っ張られる
急に身体にかかるベクトルが私を下へ連れて行く
瞬間―体勢を崩しながら、落ちる私の足を掠めるように赤い閃光が走る
これを待っていたのか、エリーは体勢をそのままに後方に跳躍―弓を構える
狙う先は一つ―残るボスの腕、その元となっている肩口
ブーストをかけ、矢を放つ
その軌跡に迷いはなく、真っ直ぐ目標に向かい、吸い込まれていった
破裂するボスの肩口
三度目の反転―再び現れる球
だが、エリーはまだ止まらなかった
「ちょっと耐えて」
それだけを口にするとエリーは構えた弓を元に戻した
私は何を耐えるのか、何をする気なのか問おうとしたが、その前に始まってしまった
エリーはチャクラムのある腕を、身体を全力で回し始める
という事は、付随しているチャクラムも自動的に大きな軌跡を描く事となる
私は空中にいながら、また別のベクトルに引っ張られ、空を円状に滑る
ボスの球からは既に触手が飛び出している
ここでエリーは腕をボスの方へ、思いっきり振り下ろした
合わせて私もボスへ向かって落ちる―そこでチャクラムが、外れた
ここまで来れば意図は読めている
やる事も分かっている―動かない足を無視して剣を抜く
後はただ、重力任せ
触手の合間を縫って、縫って、縫って―
「んのぉぉぉぉぉぉ!!」
剣が球へ突き刺さる
重力も相まって、柄の部分まで刺さったボスの球は、砕け散った