第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
まさに馬鹿丸出しとしか言えない所業
だが、ケンタの顔は不敵なまま―むしろ待っていたとでも言いたげな表情であった
「あぁそうだよ……これだぁ!!」
電撃を受けながら着地した彼はゆっくりとボスへ歩み始める
ダメージがある筈なのに、構わず彼は歩き続けている
「敵の攻撃ってのは…こっちも攻撃チャンスってな!!」
ケンタは一歩一歩進み、ボスとの距離を詰めていく
その間も彼は自身の持つ両手斧を避雷針代わりにしているようで、ボスの電撃を受け続けている
だが、彼の一歩一歩は無駄ではなかった
歩いた先―至近距離に入った彼は両手斧を振り上げる
「どっっせぇぇぇぇい!!」
そのまま振り下ろされた一撃は敵の電撃を纏っていた
一見、届いていなさそうな一撃―しかし、敵の電撃により実質の範囲が伸びており、ボスの右腕に深く刺さり、そのまま砕け散らせた
「嘘…」
「ん、やった」
これには驚きを禁じ得ない
ダメージを無視して攻撃動作中の敵へ攻撃するという馬鹿らしい戦法が功を奏したのだ
やはり彼は、生きる努力をしているだけ凄い人物ではないだろうか
尤も、そのやり方について言及するつもりはないが
再度片腕となったボスはもう一度体表の色を変化させていた
深い青に変わったボスは、変わり終わると同時に身体を縮こまらせていた
それはさながら、力を込めている図―流石に二度は無いと判断したのか、ケンタはボスの近くから離れる
彼の代わりに数名のプレイヤー達が前へ出る
縮こまっている―力を込めているが動かない、という理屈の下先手を打ってしまおうという訳だ
理屈はおかしくない筈だ
やられる前にやれ―この世界ではある程度有効な理屈だ
だが、今回は失敗だった
前に出た内の一人
彼に向かって何かが通ったと思った瞬間、彼は弾けてしまった