第14章 第21層~第30層 その1 "Trap"
引き摺られるように移動
エリーの元に着いた時には両足、その脹ら脛の裏側が痛々しい赤に染まっていた
凍った足はまだ動かず、今は立つ事も儘ならな
い
そんな私の状況とは対象的に、ボスは三本の足を上手く使ってこちらに迫ってくる
「エリー、引き摺っちゃって良いからお願い!」
碌に動けない私、今は逃げるしかない
荷物になるのは承知の上だが、今は頼むしかない
腕に巻き付いたチャクラムの糸が手繰られ、身体が浮く
ボスから離れた位置にでも投げられるかとも思ったが、直後に得られた感覚は地面のそれではなく、もっと細く小さいものに当たった感触を得た
「うぶっ!!」
腹に直接入ったかのような、突き刺さる感覚
軽く咳き込みながら、瞳に映る景色を確認する
そこは、確かに空中―だが、正確にはエリーの肩の上であった
「これで頑張る」
呆気に取られた私にエリーは軽く視線を向けながら小さな両手を回して私の身体を支える
直後、エリーが跳躍―私の身体、背中側へのベクトルが私を僅かに浮かせるがそれで手を離すエリーではない
私とエリーの下を掠めるクリスタル―という事は、跳ねるという事だ
壁で反射し、何処へ跳ねていくのか
複雑反射した三発のクリスタルは、最終的に同じ壁で同じ方向に―跳躍し、空中に今だ居続ける私達に向かってきた
エリーから右、私から僅かに見えるクリスタル
ただでさえ空中、それも動けない私を抱えたままの状態
万事休すか―そう思った私、そしてエリーとクリスタルの間に影が割って入る
後ろ姿で分かる―部長だ
ブーストをかけた状態、高速で槍を回して私達に向かうクリスタルの弾丸を全て弾いた
「やってみるもんだな、こういうの!!」
部長はそのまま着地し、ボスと対峙する
今の空中の間にボスは改めて腕に光を灯し、更にこちらに向かってきていた
私を抱えたエリーが着地すると同時に部長はボスへ走り出した
「あ…」
ボスに向かって駆ける部長
だが、今のボスが放つのはクリスタルの弾丸だけでない
身体が凍る壁もある―私の場合は足だけだったから、不便があるとは言え生きてはいる
だがもし、全身に喰らってしまったら……そんな思いが私を駆け巡ったが、既に部長は止まれない位置に着いてしまっていた