第3章 第1層~第10層 その2 "Game Start"
宿屋にて―
現実に則した見た目の月が電気を消した部屋を照らしている
窓の外には石造りの街
私のいない筈の街
改めて考えると、このゲームに囚われて少し経つ
それなのに、未だに最初の一層を越えていない
今が最初だからだろうか…だとしたら最終ボスに辿り着くのは、何時になるのだろうか?
何週間?何ヵ月?それとも何年?
それまで現実の身体は動く事なく、医療施設で眠り続ける
仮に今、クリアされたとしても身体の衰弱は否めないだろう
なら、時間がかかればかかる程衰弱は進む
恐ろしいのは、それを忘れそうになる事だ
この世界である程度、私に至っては普段以上に動けるが故、それに慣れてしまう
クリア時にギャップを感じるだろう
ここまで考えた所で考えを振り払う
今は目の前のボスに集中しなければ…
クリアする前からクリアの事を考えて、死んでしまったら意味はない
(もう寝よう…)
現状では無駄な考えをしているより、明日に備えた方が良い
ゲーム中にこんな事を考えているのも変な話だが…
簡素なベッドにある布団にくるまる
暫くすれば現実と同じように温かくなるのは驚きだが、今は寝てしまいたくて頭を動かさなかった
明日はボス戦である
死にたくないと願った私の、最初の大きな戦いである