第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
ホワイトハウス内部へ入った私の目に映るものは、ホワイトハウスのそれではなく、別の空間かと思うようなものだった
群青色に染められ、生物であるかのように拍動している
本当にホワイトハウスなのだろうか
そう思っている私に、正面から大きな何かが飛んできた
「おぶっ!」
人間大のそれは私の視界を覆うようにぶつかる
そんな対策は当然取っていない―故に正面からの勢いが私のベクトルを急速に変え、私を仰向けに倒す事となった
人間大―いや、人間だ
私の上に覆い被さるものは華奢だが、骨が押し込むように身体にめり込んで痛い
「…あ、ごめんなさい」
上からかけられるほんわかとした声―女性だ
身体を退けた彼女は髪全体をウェーブさせていて、何となく声の通りの人物と感じられる
しかし今は場所が場所
彼女の奥にボスが迫るのを捉えた故、応答する余裕はなかった
起き上がり、目の前の彼女を抱えるようにして横に転がる
直後、先程までいた地点にボスの飛び蹴りが炸裂し、地を抉った
今は避けたもののボスはまだこっちを見ている
また来るか―そう感じ、後退する為の踏ん張りを足に込めた時―
「うおぉぉぉぉ!!」
―人が割り込んだ
小柄な影、手には長大なドリル―シモンだ
自ら敵にドリルを当て、敵を抑えている
「大丈夫か、ニア!」
「はい、こちらの方に受け止めて頂いたので」
受け止めた訳じゃない―と思うと同時に彼女もまた、紅蓮団の一人だと認識する
シモンはそのままドリルを上下に動かし、ボスを払う
そして―突きを繰り出す
それはボスがドリルを握って止めた事によって届きはしなかった
だが、そこで止まるシモンではない
掴まれたドリルを回転させ、ボスの掌を削る
ドリルとしては当然の機能、しかしボスには不意の一撃
削られた手をドリルから離す―その後ろに部長
「ゴキブリはいつも、背中からパァンだよな!!」
不意を突いた一撃
それがボスに、振り下ろされた