第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
(喋った…)
何よりもまずこれを思った
これまでの戦闘では、人間以外の鳴き声を出すものが多く何かの言語を話したのは精々街のNPCくらいである
つまりあのボスは、少なくともNPCと同等かそれ以上のAIを搭載しているという事になる
凝った造りなのはすぐに理解出来るのだが…大概の日本人は嫌うあの昆虫―しかも人語を交わす
止めて欲しい事この上無い
『貴様等下等な生命体なぞ、我等スクラッグの餌にしてくれる!出でよ、タマよ!』
しかし向こうはAI
こちらの事などお構い無しだ
ボスが右手を振り上げた直後、空中から真っ黒の球が落ちてきた
タマと呼ばれたそれは、確かに紛う事なき球なのだが……人間より遥かに大きい
むしろこれでホワイトハウスを破壊した方が良かったんじゃないかというくらいに大きい
そんな球が今、芝生を抉り土を飛ばして高速回転―そのまま転がり始めた
なるほど、球故に突っ込んで来るしかないと
そう理解した間にも球は加速し、私達プレイヤーの元に近づいている
避けられない位置ではない―だが、そうする前に一人、球の前に躍り出る人物がいた
「そんなモノで…俺達が、止まる訳ないだろ!!」
小柄であるが、手には長大なドリル
その人物は真っ向からドリルを撃ち付け、球を破壊した
「俺達を…誰だと思っていやがる!!」
今や大きなギルドとなった紅蓮団―そのリーダーである、シモンだった