第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
ボスに視線を向ける
ボスはそれまで氷塊を放っていた頭がグッタリとしており、その代わりに火球を放つ頭が怒り狂っていた
それだけではない
ボスは自身の背にある羽根を大きく羽ばたかせ、遂に飛翔した
飛翔したボスの片方―怒れる頭の口元に熱気が集まる
来る―そう思った瞬間には、既にネリーの手を取り駆けていた
直後にボスは火球を放つ―しかし、それはただの火球ではなかった
発射された直後、それは割れて、割れて、割れて―拡散
四方八方に飛んでいった
走る前で、後ろで、右で、左で火球が炸裂し、瓦礫の数を増やしていく
思わず適当な方向に走ってしまったが、皆は大丈夫だろうか
今私が感じられるのは手を握ったネリーのみ
だが、とりあえず今は目の前だ
彼女が無事なら糸口が見つかりそうな気がする
これまでの一瞬一瞬を思い出す
ネリーは瞬間的でありながら、場の状況を一気に把握している
その一瞬で多数の情報を捌いている訳だ
普段の攻略の時に、多くの情報を素早く纏めてられるのも、そういう点があるからだろう
ここで、私はふと思った
何故ネリーという人物は情報屋を始めたのだろうか
それだけ捌けるなら一人でも攻略出来るだろうし、序盤で彼女に敵う人物はそういなかっただろう
しかし何故―
「あの!!」
―そんな事を思っている内に、私はネリーに口を開いていた
「こんな時に、聞く事じゃないと思うんですけど!!」
いや全くその通りだ
自分で言いながらそれを感じるが、私は止めなかった
「何で、情報屋を、始めたんですか!?」