第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
先手を取ったのはボス
氷塊を放つと同時に反対の頭が私達を喰らいに顎を高速で近付ける
上空に向けて跳躍―まずは顎を避ける
目の前には氷塊
私より僅かに前に出たネリーが腕力にブーストをかけた一撃を氷塊に叩き込む
一瞬の膠着の後、氷塊は呆気なく砕けた
「下に蹴りなさい」
何を―と言いたかったが答えはすぐに出た
ネリーは空中で左手にブーストをかけ、砕けた氷塊の中でも大きい欠片を殴って吹き飛ばした
飛んだ欠片は氷塊を放ったボスの顔面に直撃―勢いを持った質量の生み出すダメージに怯む
そうかそういう事か
やる事は理解した―こちらを襲う氷塊を逆に武器にしてやろうという事か
私の目の前には大小様々な氷の欠片―迷う事はない
その中の最大を、瞬時に判断―ブーストをかけて、踵落としの要領で蹴る
眼下より鈍く砕ける音が響く
怯むもう片方の頭―短くそこに着地し、再度跳躍
狙うはまず、氷塊を放つ方の頭だ
空中のネリーが手を伸ばすのを直後に発見
掴まない理由など、ある訳が無い
私は迷い無く、その手を掴みネリーを引き寄せた
「投げたらちゃんと、受け止めなさい。それで着地よ」
今度はすぐに分かった
鎌首をもたげる頭―空中で回転し、そこに向けて―
「ずおおぉぉぉぉ!!」
―ネリーを投げる
ネリーは構えた武器を着点―つまり、ボスの顎の下に突き刺した
戦慄き、頭を振る頭
ネリーはそれに耐えるような真似をせず、自らボスの顎を蹴って落下した
空中で、上から落ちる人を受け止める
ハッキリ言って至難の技だ
だが、その程度で届かない私じゃない
身体を無理に捻り、私自身の位置をずらす
それはネリーの落下予想位置と当て填まっていて、正面から彼女を抱き止め落下
着地直前で足を地面に着けるように曲げて―地に降り立つ
足に響く衝撃―無理な体勢と二人分の重さが、私を呆気なく仰向けに倒させた
一瞬呼吸が飛ぶが、直後にネリーが立ち上がったのもあり、私の肺には空気が割りとすぐに入れられていた
「上出来よ。でもまだ終わってないわ、立ちなさい」
強く投げ掛けられるネリーの言葉
聞いてから私は、素早く立ち上がった