第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
視線を向けた先、ボスは前足を上げこちらに向きを変えていた
これは方向転換だけではない―所謂踏みつけも含まれている行動だ
後方に跳躍して回避―着地直後に右へ駆け出す
先の着地点が瓦礫となり、熱波と共に飛ぶのを背中で感じる
しかもそれだけでは終わらなかった
私を追うように火球が放たれ、瓦礫が更に私を追いたてる
だが、逆に私が囮になっている―他のプレイヤーがボスの足回りを中心に攻撃を続けている
(このまま引き付けて―)
そう考えた瞬間、殺気
正面―その上空から氷塊が降ってきている
「―っ!」
敵の頭は二つ―先回りされたと感じる
咄嗟の判断で急激に、右へ方向転換
だが、その先にも火球が待っていたとばかりに降ってきた
激しく揺れる地面、次々と砕ける瓦礫
正面を塞がれた私に飛び散った瓦礫が襲い来る
だが、その瓦礫の一つが脇から飛んできた別の瓦礫に当たり、場所がズレた
そして、そのズレた瓦礫がまた別の瓦礫に当たり―それもまた別の瓦礫に当たり―当たり当たり当たり―
それら瓦礫の全ては私に直撃する事無く、壁を作るように落ちた
どうなっている―そう思わざるを得なかった私の目の前に再び―
「中々世話が焼けるのね、貴女」
―ネリーが姿を現した
「まぁでも、思った通りに瓦礫は動いてくれたし。とりあえず良いことにしておきましょう」
「え?あ、あの…」
何故ネリーがわざわざ私の目の前にいるのか、"思った通りに瓦礫が動いてくれた"って何なのかとか色々疑問が急に浮かび、言葉にならない
「聞かれる前に答えておくわ。飛んでる瓦礫を打ち付けて当てただけ、角度と勢いを計算すればどうという事ではないわ。そして私だって人の子なの。知り合った人間が無惨に砕け散る様は余り気分の良いものではない、という所が理由かしら」
「あ…は、はぁ…」
連続で言葉を投げられ、たじろいでしまう
直後、瓦礫が砕かれる
視線を向けるとボスが二つの頭―その顎を使って瓦礫を投げていた
瞳に映る標的は―私とネリー
「合わせなさい」
「え?」
隣で構えたネリーの一言に呆気に取られるが、急いで頭を切り替える
「連携して叩けば、そう強い敵ではない筈よ」
「わ、分かりました」
ここにそれぞれ四つの瞳が、対峙したのである