第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
「まぁ別に良いんじゃね?」
聞こえていたのだろう
変わらぬ口調でケンタが口を開いた
「俺にしろ、お前にしろ、色々考えたりした訳じゃん。そういう、自分が思った事?まぁそれをまずは貫いてみるのが筋ってやつじゃねぇの?」
「…そういうもの?」
「そういうものだろ…多分」
随分と大雑把な物言いだ
しかし、反論とかそういう気分にはならない
だからそれから、暫く互いに口を開かずにいた
私の感じた事、彼の感じた事―
それは当然違っていて、だからこそそれが交わり合ったり、ぶつかったりする
それらを含めたあらゆる時に、自分のものを貫けるか―必死に、生きていたか
この世界で求められた事の一つだろう
(十分に生きる、か…)
その事を胸の中に止めながら、来た道へと身体を向ける
「私、もう戻るね」
「おう。俺はもちょいやるから気にすんなよ」
「うん、それじゃ」
それだけ言って歩き出す
同時に、私は思う
皆が戦う事にした理由を、まだちゃんと知らないと―
必ず全てを知れという訳ではないだろうが、それらを知って……どうする?
まだ分からない
何となくそうした方が良いのでは、という程度
しかしそれが、私の"十分に生きる"事に繋がるのかもしれない
そう考えながら宿に戻り、次の朝日に備えるのであった