第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
「…俺さ、色々考えたんだ。ここが本当にスタートした後に」
ややあってケンタがもう一度、口を開いた
「その時はさ、格好悪ぃ死に方なんてしたくねぇから、死ぬ時だって前のめりなんて言ったけど……ボス戦で早速死んだじゃん」
最初―第一層ボス戦での犠牲者
最初の犠牲者、カミナの事だと即座に理解する
彼が犠牲になったが故に、私達はより必死に戦う事を余儀無くされた
「俺達の側からじゃ、本当に死んだかは分かんねぇけど、もし本当に死んだとしたらただでさえゲーム内にいる知り合いは悲しむ。しかもそれだけじゃねぇ。現実で普段周りにいる奴等だって悲しむだろうし、何より家族が一番悲しむし、皆泣く」
そう、忘れてはならない
私達は確かに今はゲームの中にいるが、それはあくまでゲーム
その周りには現実があって、家族や友人がいる
そして彼らは私達に生き残ってくれと祈りを捧げる他ない
「ふと思ったんだ、こんな事で家族を泣かせちゃいけねぇって。ここで死ぬとか…そんな不幸しちゃいけねぇって。何か…それが死ぬより嫌でさ…だったら何かしなくちゃいけねぇだろって思って…始めてたんだ。あのウザったい蛇野郎の言葉じゃないけど…十分に生きるって事かな。だから、どんなに辛くったって、続けるつもりだ」
「そっか…色々、考えたんだ」
曖昧に返しながら、今の事を反芻する
彼―ケンタは"死にたくない"という私と同種の願いを持っている
だが、そこには大きな違いがある
私は、私が死ぬのが恐ろしいと感じるし、私が死そのものを見たくない―だからそんなものを払おうと誰よりも速く動いて手を伸ばす
対して彼は、自分が死ぬ事よりもそれによる他者への影響の為に、死にたくないと願う
「何か…私って私一人しか考えてないみたい」
そんな事を感じ、無意識的に呟いてしまった