第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
不意に、目が覚める
目の前に広がるのは天井
しかしそれは、私の見知った物ではない
月明かりだけが部屋に射し込んでいるこの部屋は、ゲームの中だ
現実ではない
(後80ちょっと……長いな…)
溜め息と共に上体を起こす
どうやら眠気は暫く私の元から旅に出るらしい
となると、どうしたものか
もう一度布団に潜って横になっているのも構わない
だが、私は何の気まぐれか布団から抜け、ベッドから降りる事にした
窓辺に寄ると月明かりを一身に受ける
現実のそれよりもより白い光を放つ満月
窓を開けると涼やかな風がそよいでくる
ここは第十九層―
その中心とも言える街"レギネセ"である
山の斜面に無理矢理造ったかのように詰め込まれた街
昼は日が照っており、乾燥した暑さを存分に見せているが夜は一転して涼しくなる
それ故、一部のプレイヤーは夜に探索を進めているようだ
しかしながら私達オリジナルセブンは、現実の感覚を保つ為、昼夜逆転は行わなかった
私としては夜に動いた方が気が楽なのだが、同時に眠くなるのも事実
基本は休む事にしているのだが…今はそんな気分になれない
何をする事もなく、何を考える訳でもなく、ぼんやりと月を眺めるだけなのだが…
そうぼんやりしている私の耳に、静けさを破る―風を切る音が入ってきた
重い物―武器とかそういう類を振るう音
昼間より静か故に、余計に音が響く
ここで私は閃く
今は夜、寝るしかないのだが眠気はない
だが、起きていても横になるか月を見ているしかない
だったらたまには良いだろう
街中では人にダメージを与えられない
だからたまには、街を歩いてみるのも良いだろう
目標は、音の発生源―
そう決めて、私は部屋を後にした