第13章 第11層~第20層 その5 "進撃"
夢を見た―
ゲームの中にいるというのに、夢を見るのだろうか
だが私は夢を見ている
そうとしか言えないような、自分が浮遊した、周りを霧に囲まれた、よく分からない状態
でも私は夢を見ている
この現実感の無さに、確信を持っていた
夕方―黄昏と言った方が良いような光の中、また私は進んでいく
風もないのに花が揺れ、音もないのに波がたゆたう
何処だかも分からない、そんな場所を根拠の無い確信で歩く
不意に、全く雰囲気に合わない物が見える
黄昏の光を反射する無骨過ぎる刃―ギロチン
そしてその前に繋がれた、一人の少女
光と同化しているような金の髪、しなやかなれど豊かな肢体とそれを覆う心許ないぼろ切れ
「 」
呼べない
彼女の名を
不思議には、思わない
彼女の名は、まだ呼べない
だから―手を伸ばす
だが、彼女に届く前に私の手は止まる
何かが、響いたからだ
耳をすませる
微かに聞こえるそれは…
―――血、血、血、血が欲しい
歌…だろうか
とても澄んだ声、魅入られる
だから私の手は、彼女の横を通り過ぎて、ギロチンの刃に触れる
(ねぇ…欲しいの?)
声にならない
返答も無い
だが私は魅入られている
だから、その先を声にならずとも口にする
(だったら…あげよっか?私の…わ―た―し―の―)
そこで、不意に意識が途切れた