第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
直後、ボスが息を吹き掛ける
ただの息ではない―この場所が凍りついた理由とも言える雪と氷の息吹
即座に反応したリリィはエリーを抱えて左へ跳躍
「ん、滑る」
抱えられたエリーは短く口を開くと、矢を投げた
地に刺さった矢には彼女のチャクラムが巻き付いている
巻き取られる糸、地へ向かうリリィとエリー
先の跳躍時とは逆に、エリーがリリィをエスコート
ボスの息吹を滑りながら避ける
彼女らとは反対に跳躍したトンファー使いの少年
彼もボスの息吹に反応はした
しかし、彼はリリィよりもスピードに劣る
故に自らを壁にぶつけて制止した時、異状に気付いた
左手が凍っている
正確に言うならば、手先から武器を含めて肘まで、氷に覆われている
だからどうした―そうした意も含めて彼は鼻で笑う
「むしろよ…良い具合だろうが!!」
そう言いながら、彼は右手で氷に包まれた左腕を軽く二回、殴る
全て砕いた訳ではない―しかし、手先の側が欠け、鋭利な形となった
僅かに視線を脇へ向けると彼の獲物たる白い少女―リリィ
そして彼女をエスコートするように滑る小柄な少女の二人がボスの息吹を回避している
つまり、彼には向いていない
故に―
「余所見ぃぃ!!」
―右手で床を殴り、跳躍
目指すは真っ直ぐに、ボス―その顔