第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
目的の位置へ、もう一度ボスを殴って到着
そのまま迷い無く、ボスの仮面―その目の部分に彼は凍った左手を刺した
直後、まさに金切り声というような高音の戦慄きが場を支配する
ボスは同時に頭を振り乱し、場を揺らす
だがそれも彼には好都合であった
彼が掴むのはボスの仮面
場の揺れが収まると同時に上を向いたボスの顔に足を乗せ、仮面を掴んだままの右手に力を込める
「ぬううぅぅぅおぉぉぉぉ!!!」
彼が引き上げるのは仮面
既にボスの肌と同化しており、持ち上げるよりも引き剥がすが正しい
それを彼は右手だけで行い―剥がした
途端、今しがた仮面があった場所から大量の血が噴き出す
栓を全開にした蛇口のような量の血、血、血―
「ハハハハハハ!クハハハハハハ!!」
大量の返り血を浴び、全身が真っ赤になる中、彼―トンファー使いの少年は笑っていた
この暴虐、この殺戮―それらに至高の楽しみを見出だしているかのように、彼の笑いは途切れない
(やっぱりアイツ…狂ってる…)
自分の知ってる世界であんな存在は有り得た事がない
遠巻きに見ながら、リリィは感じる
アレに狙われている事を考えると嘆息では済まないのでは―そういう不安感が生まれる
「ハハ、カハハハハ――じゃあな」
途端に止まる笑いと静かな声
彼―トンファー使いの少年は今だ氷に包まれた左腕を掲げ、顔から飛び降りる
直後に突き出される左腕
氷の塊がボスの首を貫く
しかし、此度は血が噴き出す事は無く、耳障りな高さの断末魔を響かせて砕け散った
空間が元の意匠に戻る
床や壁を覆っていた氷は跡形も無くなり、列車の様相も消える
終わった―そう感じるリリィの前にトンファー使いの少年が現れる
「お前もああいう風に喰うからよ、それまで死ぬなよ……じゃあな」
左腕を覆う氷も、全身に浴びた返り血も消えた彼は、それだけ言うと先へ進んでいった
ここに十八層はクリアされたのである