第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
立ち往生する人混みを掻き分け、エリーが滑った先―次の車両に、目的の物はいた
十八層ボス―HPバーには"Priestess"の文字
やはりタロットだったかと彼女は思う
滑るのを止めた目の前にボス
だらしなく床に座る巨大な女性であった
豊かな肢体を持っているが、これ見よがしなパピヨンマスクや長く足を覆うドレス、胸元に書かれた「B」と「J」の文字が逆に露骨な卑猥さを醸し出している
エリー本人としては不快感を得る構図であった
だがそのボスのHPの大半が既に失われている
ボスの顔に乗る―もう一つの不快感
トンファーを得物とする少年が原因であった
「ハハハハハハ、アハハハハハ!!」
彼は笑いながら、足場としているボス―その頬を殴り続けていた
現実の女性ならば腫れるか、骨が折れるか、血を流すか―そんな勢いの拳が容赦なく放たれる
嫌な相手―自分が彼に対してハッキリとそう感じながらも、状況を分析する
敵は一つ、取り巻きの気配は今の所ない
床どころか壁や天井も凍りついている―氷柱がないだけ安全と認識する
ボスそのものはトンファー使いの少年により、実質一方的に殴られていると言って相違ない
抵抗の為に払うように腕を振るっても、回避されてその腕に乗られるだけ
これなら自分はいらないかもしれない―
そう判断し、踵を返そうとした時、影を見た
ボスの足元―長いドレスの中から小さな敵、取り巻きが現れる
ボスと同じマスクを着けたティアラ
ティアラでありながら浮遊しているそれが数体、出現した