第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
その声に何名かのプレイヤーがギョッとするのを肌で感じる
私は彼等の比では無いのだが…
「大丈夫だ」
不意に、隣の部長が口を開く
囁くようでありながら、確固たるものを感じる
それが急に来たのに驚いたのか、急激に動悸が激しくなるのを感じる
「ボスにならともかく、リリィには手出しさせないからさ。な、シンジ?」
「俺に振るな」
視線を動かした先、部長の柔らかな笑みが見える
私に変な緊張をさせない為かどうかは分からないが、私が何か答える前に部長はシンジ先輩の方に向いてしまった
しかし……ありがたい
あのトンファー男は私を狙っている
幾ら本人が今はその気でないと言っても信じきれない
だから、今はそれだけでもありがたい
「あの…今は、お願いします」
これだけ言って周りの警戒に気を戻す
幸いトンファー男はこちらに来ていないしこの際だ、今はボスにだけ集中していよう
と、思ってはいたのだが今度は異常事態に困る事となっていた
ボスが……現れない
これまでのパターンでは目で見える範囲、耳に聞こえる範囲に何かが起きてそれがボス出現となっていた
しかしそれがまるでない
取り巻きの一匹や二匹も現れない
一体どうなっている?
動くに動けないこの状況―
「どけどけ邪魔だ」
―忌々しくも打開したのはあの男だった