第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
ここからは自分のターンだとばかりに周りを押し退けながら、トンファー男は前へ出る
正直、あのまま大人しくして欲しかった
そして―
「よう、また会ったじゃん」
―出来れば見つけないで欲しかった
ただでさえギラついた目を更に輝かせながら、私に近付こうという彼の前に部長が立ちはだかる
「なんだ、金魚の糞か。何の用だ?」
この物言いに急激に苛立ちを私は感じたが、目の前にある部長の手が制止させる
「悪いけど、手出しはしないでもらおうか。今はお互いボスに集中すべき時の筈だ……それとも、今ここで俺達全員と相手をするか?」
数少ない部長の低い声色
怒気を露にしたそれであったが、トンファー男は静かに笑うだけであった
「おうおう怖い怖い。だが覚えてるだろ?俺はちゃあんと我慢、出来る、男だ。だから今は手出しするつもりはない、ちょっとした挨拶だったんだが……まぁいいさ。じゃあな、ボスは俺が潰す。お前らも楽しみたいなら、ちゃっちゃとボスを探して見付けてぶちのめす事だな」
そう言いながら彼は真っ直ぐ、一人で歩き始め、先の車両へ消えていった
とりあえず、彼がいなくなった安堵の溜め息が漏れる
しかし、こんなのをあと何回続ければ良いのだろうか―先は重いと思わざるを得ない
「あの、ありがとうございました」
「ああいや、大した事じゃない。それよりもシンジ―」
「―あぁ多分そうだ」
意味深…という程意味深でもない
内容は私にも大体想像出来た
癪だが、あの男がヒント―いや、どうするべきかを教えてくれた
出てこないなら会いに行けばいい
見つからなければ探せばいい
つまり、このボスを倒すのに必要な事は―探す事だ