第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
落とした―?
そうヒヤリとした思いが頭を駆け巡るが、直後視界に映ったものがそれを拭った
シンジ先輩を抱えて、左へ跳躍していく部長
その光景を見た私は軽くなったのを利用して加速―ブーストをかけて同じように左へ跳躍した
寸での所でボスを回避
そのまま左半身を地に付けながら、少し滑り―停止
身体が更に悲鳴を上げるが構う暇は無い
「ちょっと…起きて!起きてってば!」
今だ意識を失っているケンタの肩を揺らして起こそうとするが、効果はない
近くでは肩を揺らされたシンジ先輩が部長に起こされていた
ボスは今でこそ壁で止まっているとは言え、いつまた動くか分からない
つまり―時間はない
(だったら…強行策しか…)
そう思い、用意するのは右手
指を全て合わせて、手を平らに作る
後は―簡単だ
狙うは今だ意識を失っているケンタの額
そこ目掛けて、斜め45゚から―
「起きろって…言ってんでしょ!!」
―打ち込むだけだ
特にこれと言った音を発する事も無くそれ―手刀は命中
これで起きてくれ…でなければどうしようもなくなる
そう思いながらケンタの様子を見ていると―
「……………ぐぇ」
潰れた蛙みたいな声を彼は発した
もう一発必要かとも思ったが、彼は間もなくゆっくりと目を開けた
「ちょっと、大丈夫?生きてる?」
目の前にいるのに生きてるはどうなのだろう
我ながら疑問だが、口を吐いて出たのだから仕方ない
ケンタもこれに対して「あぁ」と短く答えた
ひとまずは安堵が漏れる―が、突如ケンタが目を開いた
同時に、殺気―後ろだ
視線を動かした先、そこにいたのは―
空中浮遊するボス本体の姿であった