第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
倒れた二人は起きる様子を見せない
つまりこのままだと二人は潰れる―圧殺される
(ダメだ…ダメだダメだダメだダメだ…)
嫌だ―極めて原始的で、極めて単純な、私の願い
死ぬのは、嫌だ
誰かが死ぬのも、嫌だ
絶対に、絶対に―
(そんな結果は認めない―)
漸く立ち上がり、先を見据える
荒い息もそのままにクラウチングスタートの体勢をとる
短く目を閉じて、"引き出し"を開ける
そして二人に向かって―真っ直ぐ走る
左半身が悲鳴を上げるがそんなものを気にしている余裕は無い
ボスも加速し、距離を二人へ詰めている
だから私も速く、速く、速く速く速く速く速く―何者よりも速く
手を―誰かと生きる手を伸ばして―
―死ぬような事なんて、ぶち壊してやる
「届けええぇぇぇぇぇ!!!」
ボスの転がる速度を越えて、ギリギリのタイミングでケンタに届く
右肩に担いだ彼の重さ分、走る事が困難になるがそうも言ってられない―シンジ先輩がいるのだ
だからまだ止まらない
重さも身体の痛みも関係無い
一心不乱に駆け抜け、手を伸ばして――届いた
「―ぁ゙!」
シンジ先輩を掴む左腕が軋んで、速度を緩めさせる
でも、止まれない―止まる訳にはいかない
故に走り続ける
先程よりも更にスピードは落ちている
逆にボスは加速を続け、私の後ろにいる事をハッキリと認識させる
だからどうした、こちらに諦めの二文字は存在しない
(走り続けて…生き延びる…!)
そう思いながら走っていた時、突如左肩が軽くなった