第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
不意にノック音が響く―客だろうか
音に反応したエリーが、私から軽く離れる
「どうぞ」
軽く振り向いて私はドアに応える
ゆっくりと開いた先―いたのは部長であった
「やぁ」
「ん、部長」
「エリーもいたのか。まぁ、そうじゃないかと思ってたけどね」
そう言いながら部長は部屋に入り、椅子へと腰掛けた
「…どうだい、最近?」
ややあって紡がれた言葉は在り来たりなものだったが、その裏にあるものは何となく読み取れた
「正直、げんなりしてました」
先日の事件
アレを通じての気分は、落ち込むよりもげんなりがより近い
部長はこれに「そうか」と答えただけだった
「これからの戦いに加えて、ああいうのまでいるってなると本当、世知辛いっていうか何ていうか…ともかく、どうしようって思ってます」
「いや全く辛い世界だよ、ここって」
そう言って部長は乾いた笑いを見せる
何かに耐えた―ガス抜きというような表情だった
「元々ゲームだから、悪い事考えればそれが表面化しやすい。その上、普段なら俺達を守る保護者って奴も、この世界じゃ無意味に近い。そこだけ極端にピックアップするなら、辛い世界―地獄みたいだ」
部長の言、何となく理解出来る
たった二つ―いや、製作者藤井水蓮氏を含めれば三つか
ともかく、数えれば片手の指で足りる程度の事柄に物凄くげんなりする
呆気なく身近な人が死んで、呆気なく自分が死ぬ―そういう地獄
部長は「でも」と言って更に続けた
「辛い世界だから皆頑張ってる。ケンタは裏で素振りしてるし、ミヤコも料理スキルを少しずつ伸ばしてるし、ユウもそれに付き合ってる。シンジもこういう時に方々を回って情報を仕入れてくれるし、エリーだって―」
「―好きにしてるだけ」
そう言いながら再び私の懐に頭を預けるエリーに部長は軽く笑いながら「分かってます」と返していた