第12章 第11層~第20層 その4 "Search"
正直私にとってはウェンドロよりもトンファー男の方が厄介極まりなく感じられる
露骨という程非常に分かりやすい、そして読み取りやすい―執着
恐らく逃すとかそういう真似は本当に無いものと思った方が良い
全く性質が悪い
そう思うと深い溜め息が口から漏れていく
まだまともじゃないプレイヤーに出くわした数は二人だと言うに…嫌な類の人物に出くわしたと改めて感じる
(本当…ああいうのはどうすれば…)
特に対応らしい対応も浮かばず、目を閉じ再度溜め息の為の吸気
それは何者かの手により、吐き出される事無く私の口の中を留まったのである
「………」
手の感じから、誰かは想像出来る
留めた空気をそのままに、ゆっくりと目を開いた先には予想通りと言うべきか、エリーがいた
「溜め息、幸せ逃げる」
さいですか
そう思いながら、起き上がりと共に一気に口の中の空気を吐く
「それで、エリーは?」
「ん、遊びに来た。暇だったし」
そう言ってエリーは私に抱きつく
彼女は随分と私の懐が気に入ってるようで、たまに暇だと言ってはこのように抱きついてくるのである
まぁ…悪い気はしない
この世界、良い事があるとするなら、こんな友人がいる事だろうか
それ以外にも外を自由に歩けるという点や、様々な人との出会い―と言ってもまだ少数だが、そういう事がある点もある
だが、友と呼べる人がいるからこそそんな機会にも恵まれるし、この世界が辛い時には"いつもの"という現実の感覚をくれる
喜ばしい事だ