第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
土煙が舞う
その汚れた視界の先が徐々に晴れる
そこには二人―トンファー男とウェンドロがおり、ウェンドロの顔の真横にトンファー
地面を穿っていた
「………」
驚愕か、恐怖か、口を開いたまま喋らないウェンドロ
トンファー男はウェンドロから離れ、彼の剣を拾った
「脅しつけてやっただけさ。ほれ、とっととどっか行け」
剣と共に投げられた言葉にハッとしたウェンドロは、急いで剣を拾うが、恨みがましいというような視線をトンファー男に向けただけで、襲いかかるという事はなく、走り去って行った
「ったく、アイツは何をしたかったんだか…これだからつまんねぇ奴は」
その場に残されたトンファー男
意味が分からないとばかりに一人、呟いていた
「…行こう。ここにはもう用は無い」
ややあって部長が漸く口を開く
全くその通り―本来の目的は達してしまったし、私が巻き込まれた問題も解決した
故に、いる意味はない
そうして、部長に支えられながら振り向いた時―
「オイ、オイオイオイオイ!待て待て待て!」
―後ろから不愉快極まりない声がかけられた
何なんだアイツ、まだ何かあるのか
そんな事を考えながら無視を決め込もうとしたが、突如何者か―いや何者かなどは無意味だ
ともかく、私は後頭部を掴まれた
直後、後頭部を掴んでいた物が離れる―部長が払ったのだろう
だが、次の瞬間に今度は私の右肩が掴まれる
「……まだ何か用があるわけ?」
軽く後ろを振り向きながら、私は静かに口を開く
分かっていた事だが、視界には相変わらず軽くニヤついているトンファー男がいた