第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「貴様ぁ…」
立ち上がったウェンドロの表情は理解出来ないものに対する嚇怒であった
それに対してトンファー男はそれまでの雰囲気を忘れてはいない
「何だよ何だよ剣殴っただけだろうが。んな顔すんなって」
"剣を殴った"―軽く言っているがそれであんなに飛ぶものだろうか
だとするなら、一体どれ程のステータスなのだろうか
疑問は尽きないがとりあえず剣を殴るという行為は、人を攻撃した事にはならないらしい
それで彼が本当に人を襲わないという証明になった訳ではないが
「殺してやる…!」
「そうかい。俺はお前を喰うつもりはねぇ」
軽くふらつくウェンドロへ、トンファー男は「だが―」と続けながら構える
「俺の獲物に手ぇ出した、仕置きはしねぇとな!」
直後、トンファー男がウェンドロへ跳躍
たった一度の跳躍だと言うに、彼はウェンドロとの距離を瞬く間に詰める
詰め寄られるウェンドロも必死か、剣を構え―
「化物がああぁぁぁぁ!!」
トンファー男へ剣を振るった
またもぶつかり合うトンファーと剣
だがウェンドロの剣は、いともあっさり弾かれ―
「止めろ馬鹿!!」
―思わず出た私の叫びと同時に、ウェンドロへ拳が振るわれた