第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
私の対応は、かなりあからさまな態度だ
しかしながら、そんなものは知らぬというようなトンファー男の雰囲気に私のイライラは加速していく
「あぁ、用という用じゃねぇんだが…」
そう言いながら頭を掻いた彼は、急に顔を近付けてきた
「今日はこれで我慢しといてやる。心配すんな、俺はちゃんと我慢出来る男さ。だが…忘れんな。お前は、俺が、喰う」
囁くような言葉は獰猛
その瞳は狂気に輝いている
視線がハッキリと交わる瞬間に右手を動かして、彼を払う
恐怖では断じて無い
だが、コイツは嫌だ―いて欲しくない
だからこそ敢えて無言で、私達はその場から去るのであった
残された彼―トンファーを武具としている少年は、彼女達が去った後もその場にいた
まるで思い出すように、目を閉じている
今回も偶然出会った白い奴―
(そういや、リリィとか呼ばれてたな…)
その記憶と共に彼は静かに笑いだす
「あぁあぁ、そうだな。あんなに面白い人間は初めてだ」
彼の中の人に関する記憶―その中で唯一、あんなに噛み付いた人間であり化け物
それこそが、自らの最大の獲物
「…早く最後の時に、なんねぇかねぇ」
いずれ来るであろう最後にして最大の楽しみ
それを待ちわびる彼―まだ、先は長い
故に、自らの手で進まなくてはならない
ある種の期待
それを胸に彼はまた、何処かへ歩みだした