第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
何故―とかそんな事の前に絞められている、という事実に喘ぐ
だが、首への絞めつけは更に強まり、酸素が減っていく
私の口はそれでも、生きる為の本能からか口を金魚の如くばたつかせるが一向に空気が入る様子は見受けられない
それと同時に、徐々にウェンドロの顔が恍惚としていくのが目に入る
「いいなぁ…いいなぁ…強いなぁ…」
口調もまるで熱に浮かされているようである
どうにかしなければいけない―しかし、酸素は更に失われ、意識が徐々に朦朧としてくる
このままでは死ぬ―殺される
それは駄目だ―死にたくない
酸素が行き届かなくなって急に痺れる右手を、彼の顔へ押し付ける
若干の驚愕―その一瞬を逃さず、左手で胴体を叩く
鳩尾に入ったのか、咳き込みながら僅かに後退する彼の身体
首への絞めつけがほどけた瞬間に右足を手前に動かし、彼の胴を構わず蹴り込む
不格好な蹴りは、完全に距離を作ったという訳ではないが私が動ける隙間は作れた
彼は鳩尾を打たれた事にいまだ軽く咳き込んではいるが、いまだその顔は恍惚
「嫌だなぁ…抵抗だなんて…」
そして彼の左手はメニューを開いている―いや、ストレージだ
直後彼の右手に別の剣が現れる
先程まで使っていたものより大きく、曲刀にも似たそのフォルムが禍々しさを放っている―駄目だ、アレから逃げないと
「抵抗だなんて…そそるじゃんかさぁ!!」
私に突き立てようと、彼は剣を真下へ下ろす
解放された腕と足を用いて、急いで後退
だが直後、左足に激痛
身体は彼から離れたものの、左足の膝から下を、縦に真っ二つに裂かれたのである