第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
投げられた―首にこなくて良かった―とか感じる前に右へ回転
左肩の先を抉られる感覚と共に、ウェンドロの剣が地面に刺さる
左肩に走る痛覚に気を向けている余裕は無い
早々に起き上がり、腕と足をバネにして正面へ跳ねる
勢いを付けた袈裟斬りは、素早く地面から抜かれた彼の剣に抑えられたが、それで終わらない
着地に合わせて、彼の腹を蹴る
僅かに彼が後退した所を逃さず―鎌鼬
普段放っているよりも圧倒的に近距離であるにも関わらず、彼はそれに反応―ブーストをかけて、鎌鼬の襲う軸線から逃げ、一気に距離を詰めてくる
鎌鼬を放った身体の勢いを、急ぎ迎撃に向けるが、遅かった
私の右から真っ直ぐに襲い掛かる刃―それは容赦等一切無く、私の腹へ刺さった
「――っ!…ぉ゙ぉ゙ぉ゙!!」
激痛が走り、HPが大きく減少する―しかし、今こそが好機
それ程深く刺さっていないウェンドロの剣を右手で掴む
それにも痛みが伴い、ダメージ量が増えるがそんな事は気にしていられない
掴んだ一瞬を逃さない―
ただそれだけを感じ、右手の握力を強める
そして私の左手には、私の剣
私のHPが減るのが先か、彼のHPを私の次の一撃で減らせるのが先か
乾坤一擲の一撃―
「づあぁぁぁぁぁ!!」
―それが今、彼の前面に繰り出された
私の左下から繰り出された一撃は鎌鼬となり、至近距離のままウェンドロに命中―彼を彼の剣ごと大きく吹き飛ばした
彼は受け身も取れぬまま、地面を転がり現在いるエリアの壁に当たって停止した
彼のHPは大きく減り、停止すると同時に、半分を切った
そして私のHPは―彼の剣が飛んだのも相まって、残り半分手前で止まっていた
『Winner Lily』
直後現れた表示が確信を持たせる
この戦い、私の勝ちで終わったのだと