第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
ウィンドウにあったボタンを押した直後、私とウェンドロの間に新たなウィンドウが現れる
『Wendoro VS Lily 初撃決着』
そう書かれたウィンドウの周りを、時計―タイマーが開始までの時間を刻む
残り、40秒
剣を抜きながら、考える
タイマーが0秒になったら、戦いが始まる
対人、という括りならば初めてだ
自分と相手の命を危険に晒して、彼は自身の強さが通用するのかを試すという
挑戦を受けた後に思うのも変な話だが、このデュエルという手法意外にもある筈だ
なのに、どうして?
そうこうしている内に残り時間が少なくなる
とりあえず今は彼の相手をする事で、彼の思惑を知れるかもしれない
そう思って、今は戦うという心を決める
3―2―1――――0
私と彼の間にあるウィンドウが消えた瞬間―スタート
だが最初に目にしたのは、彼の持つ片手剣―その切っ先だった
咄嗟に身体を左に倒し、私の剣で彼の剣を払う
彼は弾かれた勢いを用いて回転、そのまま回し蹴り―私はそれを左腕で受ける
蹴りを受けて止まった瞬間を狙って、私は袈裟斬りの要領で斬撃に移行―だが、彼はそれを受ける前に回し蹴りに用いた右足を外し、小さな跳躍から私の胴へ両足蹴り
私は攻撃を出せぬまま、肺から空気を漏らすだけで後退る
(思った以上に、速くて重い―)
始まってからほんの数秒―私が感じた事はそれだった
いや、この事実は当然だろう
現実では私は女で、彼は男―基本的な身体能力に差があるのは当たり前
今はゲームシステムによって、それが多少埋まっているだけにすぎない
という事は、男が女に喧嘩を吹っ掛けている訳か―そんな考えに至る
だが、彼はそんな事も考えているようには見えず、またも私に刃を向けて迫ろうとしている
受けた私も私だが、これは簡単に終わらない
そう感じていた